■ 抄録・要旨
| 近年、大気中オゾンの濃度上昇が指摘されている。オゾンは、光化学オキシダントの主成分であり、酸化力が強いため、植物の成長等に悪影響を与える事が知られている。オゾンの植物影響評価に係るこれまでの研究により、現状濃度レベルでも植物に対してオゾンの潜在的な影響が指摘され、オゾン濃度がさらに上昇すれば植物の生産性を低下させ、影響が顕在化する可能性の大きいことが指摘されている。一方、温暖化に係る将来の影響予測については、温度上昇に対する植生の脆弱性や水稲の高温障害などが検討されているが、気温とオゾン濃度の上昇が複合した場合の影響についての検討はほとんど行われていない。このような背景のもと、我々は、環境省環境研究総合推進費において平成20〜22年度にわたって、河野吉久(電力中央研究所)を研究代表者に埼玉県環境科学国際センター、国立環境研究所のメンバーで「気温とオゾン濃度上昇が水稲の生産性におよぼす複合影響評価と適応方策に関する研究」を実施した。本稿では、プロジェクト研究で得られた成果の一部、特に、オゾン濃度上昇が水稲の生産性に及ぼす影響に関する研究に関して得られた結果を解説した。
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